風に擦られて
陽に晒されて
地上で朽ち果ててゆく哀れ
かつて
富と栄光を背負う海の男の相棒だった
その生き様は
冬の凍てつく嵐の海にも
真夏の灼熱の水面にも
息さえ出来ない大風の中でも主を港へ連れて帰った信頼の相棒
今は
大漁に湧く港の声を聞くこともなく
ただ静かな時を刻んでいる
誰よりも
風の声を
波の声を
身近に感じながら
主のない布団が時の哀れを |
この番屋から海面が銀色に染まるその時を |
屋根という名だった時もあった |
住人はいずこへ旅路の庵かな |
大漁を待つ終の棲家 |
もはや波の音を聞くだけの |
ここにつながれて幾年月が |
大海原で雄叫びを |
私は静かに時を送る |