2011年5月15日日曜日

相棒は、漁師という孤高の旅人

波に洗われて
風に擦られて
陽に晒されて
地上で朽ち果ててゆく哀れ

かつて
富と栄光を背負う海の男の相棒だった

その生き様は
冬の凍てつく嵐の海にも
真夏の灼熱の水面にも
息さえ出来ない大風の中でも主を港へ連れて帰った信頼の相棒


今は
大漁に湧く港の声を聞くこともなく
ただ静かな時を刻んでいる

誰よりも
風の声を
波の声を
身近に感じながら

主のない布団が時の哀れを

この番屋から海面が銀色に染まるその時を


屋根という名だった時もあった

住人はいずこへ旅路の庵かな

大漁を待つ終の棲家

もはや波の音を聞くだけの

ここにつながれて幾年月が

大海原で雄叫びを

私は静かに時を送る